子どもの自己肯定感が低いときどうする?非認知能力を育てるヒント集

子どもの自己肯定感が低いときどうする?非認知能力を育てるヒント集

「うちの子、どうしてこんなに自信がないのかしら…」 「『どうせ僕なんて』が口癖になっていて、見ているのがつらい」

大切なお子さまが自分に自信を持てず、挑戦をためらう姿を見るのは、保護者としてとても心が痛むものです。子どもの自己肯定感の低さは、多くのご家庭が抱える悩みの一つです。

「自己肯定感」とは、ありのままの自分をかけがえのない存在として肯定し、大切に思う感覚のこと。この感覚は、子どもがこれからの人生をたくましく、自分らしく生きていくための「心の土台」です。

そして今、この自己肯定感を育む鍵として「非認知能力」が注目されています。

本記事では、子どもの自己肯定感の低さに悩む保護者の方へ向けて、自己肯定感と「非認知能力」の関係を解説し、今日から家庭で実践できる具体的なヒントをご紹介します。

【セルフチェック】自己肯定感が低い子どものサインとは?

まず、お子さまの言動に以下のようなサインが見られないか、振り返ってみましょう。これらは、自己肯定感が低くなっている時に現れやすい特徴です。

  • 口癖がネガティブ: 「どうせ無理」「私なんて」「うまくできない」とよく言う。
  • 挑戦を避ける: 新しいことや難しそうなことに対し「やりたくない」と挑戦する前から諦める。
  • 失敗を極度に恐れる: 一度失敗するとひどく落ち込み、再挑戦しようとしない。
  • 他人の評価を気にしすぎる: 周囲の目を気にして、自分の意見が言えない。
  • 褒め言葉を素直に受け取れない: 「すごいね」と褒めても、「そんなことない」と否定する。
  • すぐに他人と比較する: 「〇〇ちゃんはできるのに」と、自分の短所にばかり目を向ける。

これらのサインが複数当てはまる場合、お子さまは自分自身を肯定的に捉えることが難しくなっているのかもしれません。

原因は一つではありませんが、育つ環境や周囲との関わり方も影響します。結果ばかりを評価されたり、他人と比較されたりする経験、成功体験の不足、親の過干渉などが、知らず知らずのうちに子どもの自信を削いでしまうことがあるのです。

自己肯定感の鍵を握る「非認知能力」

では、どうすれば子どもの自己肯定感を育めるのでしょうか。そこで重要になるのが「非認知能力」です。

非認知能力とは、IQテストや学力テストで測れる「認知能力」とは異なり、目標に向かって頑張る力、人とうまく関わる力、感情をコントロールする力といった、数値化しにくい「内面の力」を指します。この非認知能力が、自己肯定感の強い味方となるのです。自己肯定感を支える特に重要な4つの力を見ていきましょう。

  1. 自己効力感(I can do it! の感覚): 「自分ならできる」と自身の能力を信じる力です。自己効力感が高いと、困難な課題にも意欲的に挑戦できます。小さな成功体験が自信の源泉となり、この力を育みます。
  2. レジリエンス(心の回復力): 失敗や逆境から立ち直り、乗り越えていく力です。「失敗は終わりじゃない」と気持ちを切り替え、学びの機会として捉えることができます。失敗を過度に恐れず、再チャレンジする心を育てます。
  3. グリット(やり抜く力): 目標に向かい、情熱を持って最後まで努力し続ける力です。「やり抜いた」という経験そのものが大きな自信と達成感を生み、自己肯定感を強固にします。
  4. メタ認知(自分を客観視する力): 自分の感情や思考を客観的に認識する力です。感情に振り回されにくくなり、自分の長所や短所を受け入れた上で、前向きな行動を考えられるようになります。これが、ありのままの自分を受け入れる自己肯定感に繋がります。

このように、非認知能力は「自分を信じ、乗り越え、受け入れる力」を育み、揺るぎない自己肯定感を形成していくのです。

【実践編】家庭で非認知能力を育て、自己肯定感を高める7つのヒント

ご家庭で今日から実践できる、非認知能力を育てる具体的なヒントを7つご紹介します。完璧を目指さず、できそうなことから試してみてください。

ヒント1:結果ではなく「過程(プロセス)」を具体的に褒める

「100点を取ってすごい!」という結果への称賛だけでなく、「結果に至るまでの努力や工夫」に目を向けましょう。「毎日コツコツ勉強していたのを見ていたよ。その頑張りが素晴らしいね!」というように、具体的な行動を褒めることで、子どもは「自分の頑張りを見ていてくれた」と感じ、存在そのものを認められた感覚を持つことができます。

ヒント2:小さな「できた!」を積み重ねる機会を作る

自己効力感は、「できた!」という成功体験の積み重ねで育ちます。お子さまが「これならできそう」と思える、少し頑張れば達成できる課題を用意しましょう。「靴を揃える」「自分のお皿を運ぶ」といった簡単なお手伝いで構いません。「自分で決めて、自分でできた」  という感覚が、主体性と自己効力感を大きく育てます。

ヒント3:子どもの話を「傾聴」する(ジャッジせずに聴く)

お子さまが話しかけてきたとき、アドバイスや否定から入るのではなく、まずは気持ちに寄り添いましょう。「そっか、嫌なことがあったんだね」「それは悲しかったね」と、子どもの感情をそのまま受け止めることが大切です。自分の気持ちを安心して表現できる場があると感じることで、子どもは心の安全基地を築き、自己肯定感の土台が安定します。

ヒント4:子どもに「選択」と「決定」の機会を与える

「今日はどの服を着る?」「休みの日は何をしたい?」など、日常生活の中で子ども自身に選ばせ、決めさせる機会を意識的に作りましょう。自分で選んで決めたことがうまくいけば自信になり、失敗しても学びになります。「自分の人生の主役は自分だ」という主体性が育ちます。

ヒント5:失敗は「学びのチャンス」と捉える言葉をかける

子どもが失敗したとき、責めるのではなく、その経験から学べることを一緒に考える姿勢を見せましょう。「大丈夫だよ。次はどうしたらうまくいくかな?」と問いかけることで、「失敗しても大丈夫」という安心感が生まれ、失敗から立ち直る力、すなわちレジリエンスが育まれます。

ヒント6:親自身の自己肯定感を大切にする

子どもは親の鏡です。保護者の方が「私はダメな親だ」と自分を責めすぎていると、その不安は子どもに伝わります。「完璧な親」でなくて大丈夫です。うまくいかない日があっても自分を労い、親が心に余裕を持つことが、子どもの心の安定と自己肯定感に繋がります。

ヒント7:他人ではなく「その子の過去」と比較する

比べるべき相手は、お友達やきょうだいではなく、過去のお子さま自身です。「前はできなかったのに、ここまでできるようになったね!」と、その子自身の成長に目を向けて言葉にして伝えましょう。子どもは自分の成長を正しく実感でき、自信を持つことができます。

まとめ:焦らず、子どものペースに寄り添って

子どもの自己肯定感を育むことは、植物を育てることに似ています。日々の温かい声かけや関わりを続けることで、子どもの心の中には、自分を信じるための丈夫な根がゆっくりと、しかし確実に張っていきます。

焦る必要はありません。大切なのは、お子さまのありのままを認め、その子自身のペースに寄り添い続けることです。

この記事が、お子さまの輝く笑顔と、健やかな心の成長の一助となれば幸いです。

非認知能力コラム