
近年、教育現場で注目されている「探究学習」。知識を覚えるだけでなく、自ら問いを立て、考え、表現する学びが求められています。
本記事では、学校現場で役立つ「テーマ設定のポイント」「学校で取り入れやすい探究学習のテーマ集」「実際の事例」などをわかりやすくまとめてご紹介します。
探究学習の基礎や進め方について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
INDEX
探究学習のテーマを設定するポイント

なぜ「探究学習のテーマ選び」が重要か?
探究学習はテーマ選びがすべての出発点。生徒自身が「興味・関心」や「疑問」を持てるテーマを設定することで、探究心や主体性が自然と伸びていきます。逆に、テーマを誤ると「やらされているだけ」になり、形だけの取り組みになってしまいます。
失敗しないテーマ設定の3つのポイント
(1)生徒にとって「実感がわく」テーマにする
例えば、SDGsや社会貢献がテーマでも、自分ごと化できる切り口にアレンジすると主体的に考えやすくなります。
(2)「調べ学習」で終わらせないテーマ設定
既存情報のまとめではなく、自分たちの仮説やフィールドワークを盛り込むことも重要です。
(3)規模感や難易度を「実現可能」な範囲に調整
スケールが大きすぎると現実離れしやすいので、身の回りや地域・学校単位から取り組む工夫が大切です。
生徒に「何に興味がある?」「どういうことをやりたい?」など質問しながら、生徒が自ら答えを導き出すことをサポートする姿勢が大切です。
学校で使える!探究学習テーマ集

ここでは、小学校・中学校で実践しやすい探究学習テーマを分野ごとに紹介します。
子どもが「自分ごと」として考えられるテーマほど、探究心は強くなるのでおすすめです。
① 環境・SDGs
- 「学校のゴミを減らすには?」
- 「私たちの町の水はどこから来て、どこへ行くのか」
- 「身近なエネルギー問題を考えよう」
SDGs(持続可能な開発目標)に関連づけやすく、子どもの主体性を引き出しやすいテーマです。
② 地域社会
- 「商店街を元気にする方法」
- 「地域の伝統行事を次世代に伝えるには?」
- 「高齢者に役立つサービスを考えよう」
地域の方へのインタビューやフィールドワークを通じ、協働力や共感性が育ちます。
③ 科学・自然
- 「川の生き物を調べてみよう」
- 「天気予報はどう作られる?」
- 「植物の成長を早める方法はある?」
実験や観察を伴うテーマは、探究心と粘り強さを鍛える絶好の機会です。
④ 日常生活
- 「給食をもっとおいしく、もっと健康的にするには?」
- 「ランドセルは本当に必要?」
- 「ゲームやスマホとどう付き合う?」
子ども自身の生活に直結するため、主体的に取り組みやすいテーマです。
⑤ キャリア教育
- 「地域で働く人の一日を調べよう」
- 「将来なりたい職業と今できること」
- 「働くって何だろう?」
子どもの自己理解や自己肯定感を高めるきっかけとなります。
探究学習の事例
「夢」と社会課題を結びつける探究学習の事例|小学校
新潟県長岡市立才津小学校の6年生社会科「国際貢献」の学習では、国際問題を自分ごととして考える探究活動が行われています。生徒はまず「文字が読めない」体験ワークで教育の重要性を実感し、児童労働の負の連鎖について学びました。その後、JICA専門家の活動や防災ボランティアの事例を知り、自分の将来の職業と社会課題解決を結び付けた「ステップチャート」を作成。教師、漫画家、図書館司書、カメラマンなど、それぞれの夢を児童労働解消や国際協力と関連づけて考えました。この実践は、国際理解教育とキャリア教育を融合させ、子どもたちに「未来のスキル」と社会課題の関係を気づかせる取り組みとして高い評価を受けています。
参考:グローバル教師ポータルサイト|実践事例紹介|世界の問題解決と「未来のスキル」を考える
ICTを活用した地域課題解決型探究の事例|中学校
鳥取市立桜ヶ丘中学校では、総合的な学習の時間「さくらタイム」において全校的に探究学習を展開しています。3年生は「さくらはる課’s」と題し、「生かす」をテーマに4つのプロジェクト(鳥取市の防災・福祉・特産品・観光)を立ち上げ、鳥取市を誰にとっても居心地の良いまちにするにはどうすればよいかを考えました。約4ヶ月間、地域課題を調査・分析し、ICTを活用して解決策を形にしました。最後の報告発表会では、協力者を招き、成果を発表。生徒が制作した動画は実際に地域施設で活用され、自分たちの学びが社会に還元される達成感を味わうなど、貴重な経験となっています。
参考:鳥取市立桜ヶ丘中学校|取組紹介|リーディングDXスクール
探究学習が育む非認知能力

探究学習は、単なる知識習得にとどまらず「非認知能力」を育む場でもあります。
- 忍耐力:粘り強く取り組む力
- 協働力:仲間と協力し、役割分担して学ぶ力
- 主体性:自分で問いを持ち、学びを進める姿勢
- 自己管理力:計画を立て、学びを進める力
これらの力は「非認知能力」と呼ばれ、将来の成功に強く影響することが示されています。
まとめ
探究学習の大きな魅力は、枠にとらわれず、生徒が「自分ごと」として主体的に学びを深められることです。適切なテーマを設定すれば、子どもの探究心は自然に広がっていきます。
また探究学習は、学力と非認知能力の双方を伸ばし、子どもたちの成長を支える大切な学び方でもあります。これからの学校教育において、その重要性はますます高まっていくでしょう。
まずはこの記事で紹介したテーマ集や事例を参考に、小さな一歩から探究活動を始めてみてください。その一歩が、生徒の大きな成長につながります。
参考文献
- 横浜市教育委員会(2023)「認知・非認知能力調査研究報告書概要版」
- 一般財団法人日本生涯学習総合研究所(2022)「非認知能力の概念に関する考察」
- 杉浦ひなのほか(2021)「幼児の認知能力と非認知特性の関連」『教育医学』第66巻第4号
- OECD (2015) Skills for Social Progress: The Power of Social and Emotional Skills
- グローバル教師ポータルサイト|実践事例紹介|世界の問題解決と「未来のスキル」を考える
- リーディングDXスクール|取組紹介|鳥取市立桜ヶ丘中学校