非認知能力の土台を築く!子どもの自己肯定感の高め方

非認知能力の土台を築く!子どもの自己肯定感の高め方

「非認知能力」という言葉を耳にする機会が増えてきました。学力テストの点数や偏差値といった「認知能力」と対比されるこの能力は、目標に向かって頑張る力、周りの人と協調する力、感情をコントロールする力など、生きる上での土台となる力です。

そして、この非認知能力を育む上で、重要な土台となるのが「自己肯定感」です。自己肯定感とは、ありのままの自分を肯定的に受け入れられる感情のこと。「自分は大切な存在だ」「自分ならできる」と思えるこの感覚こそが、子どもの意欲、粘り強さ、社会性といった非認知能力の芽を大きく伸ばす栄養となります。

本記事では、子どもの自己肯定感が非認知能力にどのように影響するのかを解説し、家庭で実践できる具体的な高め方について詳しくご紹介します。

自己肯定感が非認知能力の土台となる理由

自己肯定感が高い子どもは、次のような特徴を持ちます。

1. 挑戦意欲とやり抜く力(グリット)

自己肯定感が高い子どもは、「失敗しても自分には価値がある」と感じているため、新しいことへの挑戦を恐れません。また、たとえ失敗したり困難に直面したりしても、「次はきっとうまくいく」「自分は乗り越えられる」という自信(自己効力感)があるので、簡単には諦めず、粘り強く取り組むことができます。これは、近年注目されている「グリット」(やり抜く力)の根幹を成す要素です。

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2. ポジティブな感情の調整力

自己肯定感は、ストレスや不安を感じた時の感情調整能力にも影響します。自分の価値を認めているため、一時的なネガティブな感情に飲み込まれにくく、立ち直りが早い(レジリエンスが高い)傾向があります。感情を適切にコントロールできる力は、集団生活や学習において不可欠な非認知能力の一つです。

3. 良好な人間関係と社会性

自分を大切にできる子どもは、他人にも優しくなれます。自己肯定感が高いと、他人と自分を過度に比較する必要がなくなり、他者の意見を尊重したり、協調したりする力(社会性)が育まれます。これは、コミュニケーション能力やリーダーシップといった非認知能力の発展に直結します。

家庭で実践できる!自己肯定感を高める具体的なアプローチ

自己肯定感は、特別な才能ではなく、日々の生活の中で親との関わりを通じて育まれます。家庭で意識したい具体的な行動を、3つのポイントに分けてご紹介します。

ポイント1:ありのままの存在を認める「無条件の肯定」

最も大切なのは、「テストの点数」や「お手伝いの成果」といった条件付きの評価ではなく、その子の存在そのものを肯定することです。

「I(アイ)メッセージ」で伝える

「~してくれたから、ママは嬉しいよ」のように、親の感情を主語にして伝えます。子どもの行動ではなく、行動がもたらした感情を伝えることで、「自分の行動が誰かを喜ばせる」というポジティブな連鎖を生み出します。

「存在承認」の言葉をかける

「生まれてきてくれてありがとう」「あなたがうちにいてくれるだけで幸せだよ」といった言葉を、折に触れて伝えます。これは、親子の愛情の絆を強くし、子どもの心の安全基地を築きます。

非言語的なスキンシップ

抱きしめる、頭をなでる、ハイタッチをするなどのスキンシップは、「言葉で伝えなくても、自分は愛されている」という安心感を与え、自己肯定感の土台を固めます。

ポイント2:プロセスと努力を承認する「成長志向の褒め方」

結果だけでなく、そこに至るまでの過程と努力に焦点を当てて褒めることで、子どもは「自分は頑張れば成長できる」という成長マインドセットを持つようになります。

「すごい」より「〇〇したね」

「すごいね!」という抽象的な褒め言葉ではなく、「昨日の失敗を活かして、今日はこの問題を解けるまで粘ったね!」「難しいのに最後まで諦めずに頑張ったね」など、具体的な行動や努力を指摘して褒めましょう。

失敗を「学びの機会」と捉える

失敗した時こそ、自己肯定感を高める最大のチャンスです。「惜しかったね。この失敗から、次はどうすればいいか見つかったね」と、失敗を否定せず、次に活かすための糧であることを伝えます。これはレジリエンス(精神的な回復力)を養うことにも繋がります。

小さな進歩も見逃さない

「今日は昨日より早く準備ができたね」「自分で靴下を履こうと頑張ったね」など、ほんの小さな成長でも具体的に声に出して認めます。自己肯定感は、成功体験の積み重ねで築かれるからです。

ポイント3:自分で決めて行動する「自己決定の機会」

自分で選び、自分で行動し、その結果を受け入れる経験は、「自分には物事をコントロールする力がある」という感覚(自己効力感)を育てます。

選択肢を与える質問をする

「今日はどのおもちゃで遊ぶ?」「宿題はご飯の前と後、どちらから始める?」など、自分で決められる範囲の選択肢を与え、決定権を子どもに委ねます。

口出しを我慢し「見守る」

子どもが何かをしている時、つい手や口を出したくなりますが、まずは最後までやり遂げるのを見守りましょう。たとえ非効率でも、自分で試行錯誤した経験こそが自信になります。

役割と責任を与える

「タオルをたたむ係」「食後のテーブル拭きと片付け係」など、家庭内での具体的な役割を与えます。「自分は家族にとって必要な存在だ」という自己有用感を育み、自己肯定感を高めます。

Q&Aで解決!自己肯定感を高める子育ての疑問

Q1: 叱る時、自己肯定感を下げないためにはどうしたら良いですか?

A: 叱る時は、「人格」ではなく「行動」を叱りましょう。

「どうしてあなたはいつもこうなの!」と子どもの存在や人格を否定するような言葉は絶対に使ってはいけません。

「〇〇(行動)をしたのは良くなかったね。ママは悲しいよ。次はどうしたらいいかな?」 のように、具体的な行動に焦点を当て、親の感情を伝え、一緒に解決策を考える姿勢が大切です。叱った後は、必ずフォローの言葉やスキンシップで愛情を伝え、関係を修復することも重要です。

Q2: 友達と比べて「うちの子はダメだ」と感じてしまいます。

A: 「縦の比較」に切り替え、その子の「過去」と「現在」を比較しましょう。

他人(友達)との比較(横の比較)は、自己肯定感を下げる一番の原因です。比べるべきは、その子自身です。「去年の自分と比べて、ここが成長した」「1週間前はできなかったことが、今はできるようになった」というように、その子の成長の道筋を見てあげてください。親がその子の唯一無二の価値を心から信じることが、子どもの自己肯定感を築きます。

まとめ

子どもの自己肯定感は、非認知能力という名の「生きる力」を育むための重要な土台です。この土台がしっかりしていれば、子どもは変化の激しい現代社会でも、自ら目標を見つけ、困難に立ち向かい、しなやかに立ち直る力を身につけることができます。

日々の生活の中で、親御さんの「無条件の肯定」、「プロセスと努力の承認」、そして「自己決定の機会の提供」というシンプルな関わり方を意識してみてください。その温かい眼差しと声かけこそが、子どもの非認知能力を大きく伸ばし、未来を切り開く自信を育みます。

参考文献

  • アンジェラ・ダックワース(2016)『やり抜く力 GRIT』ダイヤモンド社
  • 自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子どもを育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上|文部科学省
  • 西剛志 (著), アベナオミ (イラスト) (2025年)『脳科学的に正しい! 子どもの非認知能力を育てる17の習慣』あさ出版

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