
「テストの点数は良いけれど、自分に自信がないようだ」 「指示待ちなところがあり、自分で考えて行動するのが苦手みたいだ」
お子様に対して、このような悩みをお持ちではありませんか? これからの社会で活躍するために必要な力として注目されているのが、「非認知能力」です。
2020年度からの新学習指導要領の導入に伴い、学校教育の現場でも、この非認知能力を伸ばすための新しい取り組みが加速しています。
本記事では、学校現場で実際に行われている「非認知能力を伸ばす取り組み」の事例を紹介し、家庭でどのようにサポートすればよいのか、そのヒントを詳しく解説します。
INDEX
そもそも「非認知能力」とは?なぜ学校で重視されるのか
具体的な取り組みを見る前に、なぜ今、学校教育で非認知能力がこれほどまでに重要視されているのかを整理しましょう。
「生きる力」の土台となる能力
非認知能力とは、IQ(知能指数)や学力テストの点数のように数値化しにくい内面的な力の総称です。具体的には以下のような力が含まれます。
- 自己肯定感(自分を大切に思う力)
- やり抜く力(グリット:困難があっても継続して粘り強く取り組む力)
- 自制心(感情や欲求をコントロールする力)
- 協調性(他者と協力して物事を進める力)
- メタ認知(自分の思考や行動を客観的に把握する力)
これらは学力(認知能力)を支える土台であり、人生の成功や幸福を予測する重要な要素とされています。
文部科学省が掲げる「新しい学力観」
文部科学省の新しい学習指導要領では、「生きる力」を育むために以下の3つの柱を掲げています。
- 知識・技能
- 思考力・判断力・表現力等
- 学びに向かう力・人間性等
この3つ目の「学びに向かう力・人間性等」こそが、まさに非認知能力に該当します。学校教育は今、「何を教えるか」だけでなく、「どのように学ぶか」「どのような資質・能力を育てるか」へ大きくシフトチェンジしているのです。
【実践事例】非認知能力を伸ばす学校の具体的な取り組み4選

では、実際の学校現場ではどのような授業や活動が行われているのでしょうか? 特徴的な4つの実践事例をご紹介します。
1. 探究学習
近年、多くの学校で導入されているのが「探究学習」です。 先生が答えを教えるのではなく、生徒自身が問いを立て、調査し、解決策を考える学習スタイルです。
具体的な活動例
- 「地域の商店街を活性化するには?」というテーマでフィールドワークを行う。
- SDGs(持続可能な開発目標)に関連した課題を見つけ、改善案をプレゼンする。
伸びる非認知能力
- 主体性: 自分事として課題を捉える。
- やり抜く力: 正解のない問いに対して試行錯誤を繰り返す。
- 協調性: チームで意見を出し合い合意形成を図る。
2. 振り返り(リフレクション)の習慣化
授業の終わりや行事の後に、必ず「振り返り」の時間を設ける学校が増えています。単に「楽しかった」という感想文ではなく、自分の思考プロセスを見つめ直す活動です。
具体的な活動例
- ポートフォリオ(学習記録ファイル)に、活動や感想をまとめて成長を可視化する。
- 「できたこと・難しかったこと・次に挑戦したいこと」を記録する振り返りカードを活用する。
伸びる非認知能力
- メタ認知: 自分を客観視し、次のアクションを計画する力。
- 自尊感情: 「自分はこれだけできるようになった」という成長実感を得る。
3. 特別活動(学校行事・委員会活動)の質の転換
運動会や文化祭、委員会活動などの「特別活動」は、日本型教育の強みと言われてきましたが、ここでも変化が起きています。 「先生が決めた手順通りに動く」のではなく、「生徒主体で企画・運営する」スタイルへの転換です。
具体的な活動例
- 運動会の種目やルールを生徒会が中心となって一から決める。
- 失敗しても大人がすぐに手を出さず、生徒同士でリカバリー策を話し合わせる。
伸びる非認知能力
- リーダーシップ・フォロワーシップ: 集団の中での役割を果たす。
- レジリエンス(回復力): 失敗やトラブルを乗り越える経験。
4. 対話的な学び(グループワーク)
「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」の視点から、一方的な講義形式ではなく、生徒同士の話し合いが授業の中心になっています。
具体的な活動例
- 正解が一つではない問題について、異なる意見を持つ他者と議論する。
- 「教えてあげる/教えてもらう」の関係性を固定せず、互いに学び合う。
伸びる非認知能力
- 共感性・他者理解: 自分とは違う考えを受け入れる。
- コミュニケーション能力: 自分の考えを論理的かつ相手に配慮して伝える。
家庭でできる!学校の取り組みとの連携ポイント

学校での取り組みは、家庭でのサポートもあるとさらに効果的です。家庭でできる学校の取り組みとの「連携ポイント」をご紹介します。
1. 「結果」ではなく「プロセス」を褒める
学校での探究学習や行事活動において、親はどうしても「成績はどうだった?」「優勝できた?」と結果を聞きたくなります。 しかし、非認知能力を伸ばすには「どうやって工夫したの?」「どこが難しかった?」と、そこに至るまでの過程(プロセス)に関心を持つことが大切です。
2. 家庭内でも「問い」を投げかける
学校でのPBL(課題解決型学習)と連動させるように、家庭でも「正解のない会話」を楽しみましょう。
- 「なんでニュースでこの話題が出ていると思う?」
- 「今度の休み、家族みんなが楽しめる計画を立ててみてくれる?」
このように子どもに考えさせ、決定権を与えることで主体性が育ちます。
3. 失敗を「学びのチャンス」と捉え直す
学校で失敗して帰ってきたときこそ、非認知能力(レジリエンス)を伸ばすチャンスです。 「だから言ったじゃない」と責めるのではなく、「その失敗から何がわかった?」「次はどうすればうまくいきそう?」と問いかけ、再挑戦への意欲を引き出してください。
まとめ:非認知能力は「一生モノ」の財産
学校教育は今、大きく変わろうとしています。 知識を詰め込むだけの教育から、知識を使ってどう生きるか、どんな人間性を育むかという教育へ。
これからの時代、AI(人工知能)が進化しても代替できないのが、創造性や協調性、やり抜く力といった非認知能力です。 学校の取り組みを理解し、家庭や地域が連携して子どもたちをサポートすることで、子どもたちの「生きる力」は確実に伸びていきます。
参考文献
- 文部科学省(2020)『新しい学習指導要領のポイント』
- 文部科学省(2020)『学習指導要領改訂に関する広報資料』
- 「幼児教育の経済学」2015/6/19 ジェームズ・J・ヘックマン (著), 古草 秀子 (翻訳)
- 文部科学省(2022) 『今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(中学校編)』
- 太子町教育委員会『令和5年度幼小中一貫教育の取り組み〜非認知能力で結びつけた未来へ向かう学びの可能性』



