非認知能力とは About non-cognitive skills

正解のない時代を生きる子どもたちに、
いま本当に必要な力とは?

「自分の意見をうまく伝えられない」「人との関わりが苦手」「なぜか勉強のやる気が続かない」――。
子どもの成績や行動の“見えない部分”に悩む保護者や教育関係者は少なくありません。
そんな中、近年注目されているのが 「非認知能力」という考え方です。

これは、テストの点数や知識では測れない、自己肯定感や人間関係力、主体性、感情のコントロールといった「目に見えにくいけれど、生きていくうえで非常に重要な力」のこと。
この力に、いま教育や採用の現場が注目し始めています。

見えにくかった力に光を当てる

従来の学力テストなどで測定されてきた「認知能力(知識・技能)」に対し、数値化が難しく、見過ごされがちだった力を総称して「非認知能力」と呼びます。
具体的には、コミュニケーション力、主体性、リーダーシップ、自己肯定感、思いやり、忍耐力などが含まれます。

OECD(経済協力開発機構)が分類する非認知能力の主な15項目

  1. 自制性課題に
    粘り強く取り組む力
    • 責任感
    • 自己抑制(感情や衝動のコントロール)
    • 忍耐力・粘り強さ
  2. 情緒の調整
    感情をうまくコントロールする力
    • ストレス耐性
    • 感情の調整力
    • 楽観性(前向きに物事を捉える力)
  3. 協調性
    他者と良い関係を築く力
    • 共感力(他者の気持ちを理解する力)
    • 協調性・礼儀正しさ
    • 社交性(人と関わることを楽しむ力)
  4. 思考の柔軟性
    新しいことを受け入れる力
    • 好奇心
    • 創造性
    • 寛容性(多様な価値観を受け入れる力)
  5. 自己志向性
    自ら目標を持ち、行動する力
    • 自信・自己効力感
    • 責任ある意思決定
    • 目標に向かう力

なぜ今、非認知能力が注目されているのか

急速に変化する社会において、「正解のない問いに向き合う力」や「他者と協働する力」がこれまで以上に求められるようになっています。
知識を持っているだけでは不十分で、その知識をどう活かすか、どう人と関わるかが問われる時代です。

さらにOECDやユネスコなどの国際機関も、非認知能力の育成を重要視。
国内でも「総合型選抜」などの大学入試改革が進む中、テストでは測れない“その人らしさ”に光を当てる評価軸として、非認知能力が注目されています。

非認知能力と認知能力の関係

非認知能力と認知能力(学力)は、決して別々のものではありません。
子どもが「楽しい!やってみたい!」と感じる体験を通じて、知的好奇心や学習意欲が高まり、結果的に学力向上にもつながるという好循環が起こります。

また、困難な場面でも「自分ならできる」と思える自己肯定感や、途中であきらめず続ける力(GRIT)などの非認知スキルがあれば、より深い学びが可能になります。
だからこそ、幼児期・児童期からのバランスの取れたアプローチが大切なのです。

非認知能力自己肯定感・GRIT

学習意欲

認知能力学力

非認知能力の教育的意義

非認知能力は、「見えにくいけれど、確かにそこにある力」。
この力を定期的に測定し、フィードバックすることで、生徒自身だけでなく、保護者や教員が子どもの個性を客観的に把握できるようになります。

指導の方針や学習サポートも、教師の勘や経験だけに頼るのではなく、根拠あるデータをもとに個別最適化が可能に。
特に自己分析ツールとしての活用や、キャリア教育・探究学習の成果を見える化する手段としても注目されています。

数値化が難しかった非認知能力を、見えるかたちに。

長年「測るのは難しい」とされてきた非認知能力ですが、近年はその定量化・可視化に向けた研究と技術が進んでいます。

例えば、「自己肯定感」「協調性」「忍耐力」など、これまで感覚的に語られていた力も、専門的な観察とWebテストの組み合わせによって、客観的なスコアとして把握できるようになっています。

非認知能力検定
により得られる可能性

探究学習やキャリア教育の成果を“見える化”

非認知能力検定は、探究学習やキャリア教育の効果を“見える化”するために誕生した新しい取り組みです。
定期的な受検とフィードバックにより、生徒自身はもちろん、保護者や指導者もその子らしい特性を客観的に把握でき、個性に合った学びや関わり方のヒントを得ることができます。

また、興味のあることに夢中になる経験は、学ぶ意欲や思考力(=認知能力)を高めるきっかけにもなります。
こうした体験を積み重ねる中で、自己肯定感や忍耐力といった非認知能力も自然と育まれていきます。

近年、教育現場では「学力だけでは測れない力」の重要性が注目されるようになりました。
しかし、非認知能力は数値化や評価が難しく、個々の特性を捉える客観的な方法が限られていたのが実情です。
そうした課題を背景に、OECDの枠組みを参考に、非認知能力を9項目に分類し、行動観察とWebテストを通じて定量化するこの検定が開発されました。

見えにくかった力を見えるかたちにすることで、子どもの“可能性”を広げる第一歩につながります。

非認知能力検定とは
参考資料
  • ・幼児の認知能力と非認知特性の関連 (2021年) 杉浦ひなの ,春日晃章 ,大坪健太 ,佐藤善人 ,小長谷研二
  • ・「非認知能力」の概念に関する考察<集約版>(2022年) 一般財団法人 日本生涯学習総合研究所
  • ・横浜市教育委員会委託調査「認知・⾮認知能⼒調査研究」報告書概要版(2023年) 国⽴⼤学法⼈ 横浜国⽴⼤